SPSP のランキングはどれくらい当たっているか

2026-09-07 · 簡易版 · 技術版は 「実データでの方式比較」

前の記事 「ランキングの良さはどうすれば測れる?」 で、ランキングの良さを測る 4 つの指標と、その使い分けを説明しました。この記事はその指標を実際のデータに当てて、SPSP のランキングが Elo、Glicko-2、UltRank などと比べてどれくらい当たっているか、実力帯ごとに見るとどうか、を確かめた結果です。

概要
この記事の流れ
  1. 比べ方
  2. 方式の比較
  3. UltRank との比較 (掲載 200 人の中で)
  4. 実力帯ごとに見ると
  5. まとめ

1. 比べ方

対象は篝火 (国内最大級の大会) で区切った 4 シーズン、100 人以上の大会 180 件です。各大会について「大会直前のランキング」で予想を作り、その大会の結果と突き合わせます。指標は前の記事の 4 つ、ペア一致率 (PA)、平均絶対 SPR (MASPR)、上位シード勝率 (FWR)、アップセット幅 (ULG) です。PA と FWR は高いほど、MASPR と ULG は低いほど良い値で、優劣の判定は ULG と FWR を軸に行い、PA と MASPR はシードバイアスを受けるので併せて見るだけにします。2 つのランキングの予想を同じ大会・同じ結果に当てて差を取り、その差が運の揺れより大きいかを見ます。

用語: 運の範囲

アップセットは実力が同じでも運で起きます。だから 1 大会だけでは差が本物か分かりません。2 つのランキングの差を大会ごとに取って平均し、その平均が運によるばらつきの何倍あるかを見ます。この記事で「運の範囲を超える」と書いたところは、運だけでその差が出る確率が 5% を切る場合です。大会を 4 倍集めると、同じ差でも運によるばらつきは半分になります。

2. 方式の比較

同じ 180 大会で、いろいろな方式に同じ条件で予想させて比べました (素の Elo や Glicko-2 は過去のデータを見ていない状態から学習するので、学習が浅い最初のシーズンを除いた 3 シーズンで比べています)。値は、ペア一致率と上位シード勝率は高いほど良く、アップセット幅は低いほど良いです。

方式PAFWRULG読み
SPSP 総合 (組み合わせ)0.8600.7840.173どの指標でも上位。ペア一致率では 1 位
SPSP 直対評価だけ0.8540.7850.169勝敗を見る指標では 1 位。上位帯はこちらが強い
SPSP 順位評価だけ0.8550.7720.187ペア一致率は高いが勝敗を見る指標では下 (シードバイアスの影響あり)
Glicko-2 (素のまま)0.8330.7650.190計算式だけの方式では一番良いが、SPSP の調整には届かない
Elo (素のまま)0.8200.7520.208Glicko-2 より一段下
JJPR (参考)0.8310.7450.225参考値。試合の勝敗を学習しない方式なので、直接の比較対象ではない

方式の順位は、13 種類の指標のうち 11 種類で同じ (SPSP の 2 つ > 順位評価 > Glicko-2 > Elo) になり、ずれたのは順位を見る指標だけでした。SPSP の総合が他の方式より当たっているのは、シードバイアスのせいではないと言えます。

3. UltRank との比較 (掲載 200 人の中で)

UltRank 2025 Japan の集計期間は 2024 年 12 月 17 日から 2025 年 12 月 15 日です。掲載選手 200 人の中だけで測るので、他の方式と同じ表には載せられません。集計期間の前・中・後とシーズンで分けたのが次の表です。太字は SPSP 総合と UltRank のうち良かった側です。

シーズンUltRank の集計期間との関係大会数SPSP 総合UltRank 2025
PAFWRULGPAFWRULG
篝火 11〜12 (2023-10〜2024-05)期間前300.7810.6770.3050.6920.6590.375
篝火 12〜13 (2024-05〜2025-04)期間前390.7680.6720.3420.7070.6600.365
篝火 12〜13期間内250.7210.6570.3930.7150.6450.365
篝火 13〜14 (2025-05〜2025-10)期間内240.7210.6680.3640.7220.6770.342
篝火 14〜15 (2025-11〜2026-05)期間内70.7360.6500.3950.7430.6330.331
篝火 14〜15期間後230.7410.6780.3800.7140.6510.401

集計期間の中では、UltRank は SPSP と同程度で、アップセット幅では上回っています。その期間の結果を見て作られた順位表なので、その期間の結果に対してはある程度の説明精度があります。これは UltRank の本来の目的に沿ったもので、UltRank は 1 年間の実績をまとめる順位表であって、次の大会を予想する道具ではありません。一方、期間の前と後、つまりまだ結果を知らない大会に対しては、どのシーズンでも 3 つの指標すべてで SPSP を下回りました。UltRank は「その年に何を成し遂げたか」の記録としてはある程度の説明精度がありますが、これからの強さの予想には向かず、シーディングに使うのは不向きです。逆に SPSP は、結果を知らずに予想しているのに、結果を知って作られた UltRank とその期間で同程度だった、ということでもあります。

4. 実力帯ごとに見ると

ランキング全体の当たり具合は 2 節のとおりですが、「トップ層の並びは正しいか」「裾野は正しいか」は別の問いです。そこで大会の最終順位の帯 (1〜16 位、17〜64 位、…) ごとに、その帯の選手同士の試合と組だけを取り出して、4 つの指標で測りました (タブで切り替えられます)。前の記事で見たとおり、帯別の一次指標はアップセット幅です。深い帯ほどシード番号の近い選手同士の試合や組になるので、値そのものは帯によって変わります。帯をまたいで値を比べず、同じ帯の中で方式の間の差を見てください。

低いほど良い。帯別の一次指標。

方式1〜16 位17〜64 位65〜1024 位1025 位以下
SPSP 総合0.5230.3430.1370.128
SPSP 直対評価だけ0.5070.3340.1350.133
SPSP 順位評価だけ0.5480.3630.1510.138
Glicko-2 (素のまま)0.5210.3530.1590.181
JJPR (参考)0.5700.4130.1970.179
(試合数)40467498329353150

装飾は総合と直対評価だけの比較です。太字は、その帯で相手より良い側 (目安で、運だけでこの差が出る確率がおよそ 7% 以下)。太字の斜体は、両者がほぼ同等のもの。他の方式は装飾していません。運の範囲を超えるかどうかの厳密な判定は、次の表を見てください。

上の表の差が運の範囲を超えているかを、同じ 4 つの帯で厳密に判定した表です。勝敗を見る 2 つが判定材料で、順位を見る 2 つは参考です。各欄は良かった側で、太字は運の範囲を超えたものです。

帯FWRULGPAMASPR判定
1〜16 位直対直対直対直対直対評価だけが強い
17〜64 位直対直対差なし差なし互角〜直対有利
65〜1024 位直対差なし総合総合互角〜総合有利
1025 位以下総合総合総合総合総合有利

読み方と、分かったこと:

この結果から、SPSP の総合ランキングは「トップ層は直対評価、裾野は順位評価も混ぜる」という今の組み合わせ方が、実力帯ごとの性質に合っていると言えます。

まとめ

数値つきの検定結果と再現手順は 「実データでの方式比較」 に、指標そのものの説明は 「ランキングの良さはどうすれば測れる?」 にあります。